ふきのとう
工藤直子
○教材について
二年生にしてはやや長めの文章である。ゆえに音読の学習をまずおきたい。会話文だけでなく、情景描写などもイメージを持って音読することを指導したい。また声を合わせて精読することである程度の速さで音読することができるように練習させたい。
内容面に関しては、春を迎える自然の様子を擬人化しつつ描いているので読みやすく、登場人物の関係性も分かりやすいのでストーリーを追うことにはあまり問題はないだろう。
○ストーリーから描写に目を向けて
読みの発達の大まかな指標として、ストーリーを追う読みから、叙述や場面にこだわって読む読み方へと自然に学習者は移行する。その移行を促す意味でも二年生ぐらいから徐々に、分析的な発問を投げかけていきたい。推論を促す発問はやや早い感があるので、少し控えるが、登場人物や情景描写に目を向けさせるような発問は積極的に仕掛けていきたい。
○人物関係の連鎖
かつて「大きなかぶ」などでは、大きいものから順に小さいものへと連鎖する人物関係が学習のポイントとして設定された。この作品も、ふきのとう→雪→たけやぶ→春風と徐々に連鎖した人物関係がストーリーの展開の軸としておかれている。問題なのはお日様の存在で、この存在がアクセントとなり、逆向きの連鎖が展開する。
人物関係に意識を向けることは物語文を読み解くためには読み解くためには重要な観点であるが、できれば図式化して視覚的に理解する学習を組織し、人物関係を図式化しながら読む読みのスキルを身につけさせたい。
もちろん人物関係に焦点を当てるならば先に述べた直線的な連鎖と、太陽と春風の連鎖の二つに目を向けさせる。特に春風と太陽の関係は、太陽そのものの存在を考えさせる学習に結びつけることもできるので是非行っておきたい学習である。
○音読の速さと声の調節
冒頭にも述べたが、二年生にとってこのくらいの長さの文章を音読することができれば、一年生から積み重ねてきた音読指導はある程度完成を見ることとなる。 そこで、気にしたいのは、音読する速さと声の大きさの調節である。音読しながら書かれている内容をある程度理解することができるようになったかどうかは、学習者が音読しているのをよく観察し、適切な速さでスムーズに読めているかという点を捉えなければならない。語句の途中でつまったり、読むのが極めて遅かったりする場合は、文字を声に出して読むのが精一杯の状態で、音読しながら内容を理解していない可能性が高い。そういった学習者には取り立てて音読の指導を施して行く必要がある。
また、声の大きさなどはそろそろ人物形象との関係で意識できるようにしたいので、適度に会話文もあり様々な人物が出てくるこの教材で仕掛けておきたい学習である。
ふきのとうは小さな声で、お日様は大きな声でといったレベルでよいので意識的に声の大きさを調節するようにしたい。また冒頭の静かな場面と後半の風が吹く場面とでも、声の大きさはやはり意識して変えさせたい。場面のあり方と声の大きさの関係も意識させたい。
工藤直子
工藤直子