きつつきの商売

林原玉枝

○教材について

書字力が安定してくる時期に、このくらい長い文章に出会わせることの意味は大きいと考えます。ストーリー性よりもむしろ場面性の強い話しですから、ストーリーを追う読み方から細部の表現や描写に目を向けて読めるように、発問したり、話し合ったり、課題を設定したりする必要があるでしょう。 「書くこと」、「読むこと(黙読)」、「話しこと(音読)」、「聞くこと」の四つの活動が連動した学習を組織し始めるのもこのころかと思います。これまで、別々に進めてきたこれら四つの言語活動を組み合わせた学習を構想することで、それぞれが効果的に結びついてより深い言葉の学習が成立すると考えられます。 そういう意味では、「黙読-音読」を結びつけた学習や「音-文字」を結びつけた学習などを構想して、言葉を使うことの多様性や言葉を様々な方法で用いてみることによって多くのことを発見できることを実感させたいと考えます。

○場面展開と詳細な読みとり

この教材は、「1」と「2」の二つの場面があります。学習の手引きにもあるように、「登場人物」「事件」「人物の行為」など、物語文を構成する要素をしっかりと意識させてそれぞれの場面をまとめさせることが重要です。

これは、書かれている内容を深く読み取るためというよりは、この時期の学習者に、物語文を読む際に意識させたい観点を身につけさせることをねらいとするものです。もともと学習者は幼児期から生活の中で絵本に触れていますし、テレビなどでもアニメやドラマなどに触れる機会があります。こうした生活の中で「ストーリー」に触れることが、学習者に「ストーリーを追う」理解の仕方を獲得させています。これは私たち大人も同様で、物語を理解しようとする際に無意識のうちに話の展開に意識を奪われています。

こうした、「ストーリーの展開に意識を向けた読み方」から徐々に「場面のなかでの出来事」や「情景の書かれ方」「言葉の使い方」などにも意識を向けるようになってくるとより深く物語文が理解できるようになってきます。基本的には正確に読み取ることも目指したいので、前半の展開として、場面ごとに先に挙げた観点にそってまとめていく時間をとりたい。その後、学習者に二つの場面を比べさせて色々な気づきを生み出させると、教材について比較的自由に語り合える雰囲気ができてくるのではないかと思います。

○音を売る商売

目に見えないものや実体のないものをやりとりすることを題材にしている点に非常に惹かれます。実体のないものが、買いに来た動物たちの心を癒す、そういったコミュニケーションのあり方自体に目を向けさせ、その素晴らしさに気づかせたいと思います。また、そういったコミュニケーションが学習者の生活の中に見あたらないのであれば、学習者をそういうコミュニケーションの発信者となってみるような言語活動を組織することも価値あることではないかと思うのです。また、音を聞くことで心が癒されるという心の動きを言葉を通して理解させるために、買い物に来た動物たちが音を聞いてどのように感じたのかということを焦点化して学習を組織し、聞き方との関係やどのような音であったのかということとの関係について発問を組み立てていくと思います。

そういう読みとりを経るならば、学習者が「耳を澄まして音を聞く」活動へと展開することもできます。生活の中の音や自然の中の音を耳を澄まして聞いてみる、そして感じたり考えたりしたことを相互に伝え合ってみる学習もおもしろいのではないでしょうか。  さらに発展するならば、様々な音集めから、録音した音を友達に聞いてもらいながら、自分がどんなことを感じたかを発表するような機会を作るのも一つの手ではないでしょうか。

いずれにせよ、「耳を澄まして音を聞いてみる」ということに焦点化していくとこの教材のよさが出てくるように思われます。

41PUSg-KyXL_edited.jpg
41PUSg-KyXL._SL250_.jpg
41PUSg-KyXL._SL250_.jpg

猫の商売

林原玉枝