ちょっと立ち止まって

桑原 茂夫

○教材について

 三枚のだまし絵を例に挙げながら展開する本教材は、人間の視覚の危うさをテーマにしたコンパクトな説明文である。絵とそれについての説明の対応関係がはっきりしているので、文章の区切りが捉えやすく、段落構成を学ぶ学習や、主張への道筋を捉える学習には適していると思う。
 内容面で追求する学習を構想して、最後もてあましてしまうならば、割り切って、例示や段落構成、論理展開の学習として用いる方が効果的なのではないだろうか?


○三枚のだまし絵

 三枚のだまし絵と10段落をばらばらに切り出して、絵と文章を関係づけながら文章全体を再構成する学習活動を構想したい。これは教育実習生の授業などでも何回か取り組んでもらった学習活動なのであるが結構、学習者が頭をひねり、かつ行き着く答えが一様ではない場合が多かった。そこから根拠などを発表させながら読みを深めていく学習を展開した。
 この教材は先にも述べたように、だまし絵それぞれに対して、人間の視覚の危うさの説明と結論が対応しており、まず「意味段落」を捉えることが求められる。さらに、順序の問題は接続詞などをよく捉えておかないとならない。その上、大きく序論ー本論ー結論の序論の部分と結論の部分を意識しないと、全体を再構成することができない。多くの学習者の誤答がこの部分を意識しないで再構成したことによるので、改めて文章展開における序論と結論の働きに触れてみるのもおもしろいだろう。



○意見を持つための道筋

 調べ学習には知らなかったことを理解する「知識構築型の調べ学習」と自分なりの意見を持つための「意見構築型の調べ学習」がある。前者は小学校で行う調べ学習の大半が該当する。そして中学校では後者を構想してほしいと願いはするのだが、結構、意識しないで調べ学習を構想するため前者になってしまい、頭の良くなった中学生は省エネのために、調べたことをそのままコピーして継ぎ接ぎしてしまう。これは、学習者が怠慢なのではなく、構想する学習に目的が無いことによるものである。
 そこで、中学生には、テーマを与えて、調べ学習を通して自分の意見を持たせた上で、意見文を書かせる学習を構想したい。そういった学習のモデルとしてこの教材は適している。教材の場合は人間の視覚の盲点を説明し、認識の枠組みまで至るが、何もそこまで飛躍しなくても良いのだが、写真を起点にして、自分なりの意見を持ち、文章を書いてみるプロセスを追うことはできる。
 戦争の写真を三枚与えるのもいいだろうし、自然破壊の写真を三枚与えるのでもいいだろう。写真を起点にして調べ学習に入り、それぞれに写真を説明したり位置づけたり解釈したりする活動を通して文章本体を構想し、最終的に至る意見をそのまま書かせてみればそれなりの意見文が完成する。それぞれの学習者が自分の書いた文章を誰かに読んでもらったり相互に批評し合う中で、自分なりの意見を持つためのプロセスが洗練されていけば学習としては一定の効果を見るのではなかろうか?


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